エッセイ・親切は人のためならず

 

 あなたは『親切は人のためならず』という(ことわざ)の意味を知っていますか。親切は、その人の(ため)にならないから、しない(ほう)がいいと思っていらっしゃる(かた)も多いかと思います。本来の意味は、人に親切にすることによって、その親切がまわりまわって自分に返ってくるから、人にはどんどんやさしく親切にしてあげることが大切だという意味です。

 私はJR中央線を使って病院に通っています。東京のJR荻窪(おぎくぼ)駅での車内での出来事です。90歳前後の杖をついた老夫婦が電車に乗ってきました。私は立っていましたが、30歳代と思われる男性客が「どうぞ」と言って席を(ゆず)るため立ち上がりました。年老いたご婦人は「いいですよ」「ありがとうございます」と言って(すわ)られました。(となり)で坐っていた20歳代と思われる女性客は(だま)って立ち上がり、手で「どうぞ」という動作(合図)をしました。年老いた紳士の男性は「申し訳ございません。ありがとうございます」と言って坐られました。

 私は関西の出身ですが、奈良県では「坐ってちょうだい…」とか「どうもおおきに……。助かりますわ」と言って、席を譲り合う場面を目にすることがよくありました。東京ではシンプルに言葉数少なく「どうぞ」と言うだけで親切な行為(こうい)がなされるのだと思います。人に親切にするって、何とっても勇気のいることですよね。このことは、困っている外国人に対しても同様だと思います。

 人間として、身体のご不自由な(かた)やご年配者の方々(かたがた)に、親切にすることは最大に大切なことだと思います。今日は電車の中ですばらしい光景(こうけい)を目にし、うれしい気持ちで一杯です。私も「親切は人のためならず」、小さなことでもいいから、人には親切に(せっ)していきたいと思っています。   

2014916日・敬老(けいろう)の日の翌日

亜紀(あき)() 春樹(はるき)

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